天空の花園
ヒマラヤの高地(標高4000~5200m)には驚くほど多種多様な植物が咲き乱れています。
標高5000mにも花が咲き、植物は過酷な環境の中で進化と適応を繰り返してきました。それは驚きの美しさと不思議と感動の世界です。その景色は正に「天空の花園」なのです。
ここでは、ケシ科 Meconopsis/キク科 Aster/ベンケイソウ科 Rhodiola/サクラソウ科 Primula/バラ科 Rosa/ユリ科 Lilium/ラン科 Orchida/リンドウ科 Gentiana/その他etc./を紹介します。
ケシ科
ヒマラヤの花と言えば、誰もが「青いケシ」を想像するほど有名です。このケシは別名「ブルーポピー」とも呼ばれています。ところが青いケシはヒマラヤ以外にも咲いています。この仲間は数が多く、その中でも「ヒマラヤの青いケシ」と言えば標高5000m付近に咲くメコノプシス・ホリドゥラ(学名Meconopsis horridula)を指します。このケシの存在を伝えたのはヒマラヤの登山家たちであったと言われています。そのためこのケシは高く遠い場所に咲く「伝説の花」として語り継がれてきました。
Meconopsis horridula
撮影 2019.7.18 4th Lake
標高 4900m
Meconopsis horridula
撮影 2017.7.20 5th Lake
標高 5000m
Meconopsis horridula
撮影 2017.7.25 1st Lake
標高 4700m
キク科
ヒマラヤの高地ではキク科の植物をよく見かけます。それは過酷な自然環境への適応能力が高いと言うことでしょう。ここに挙げたのはウスユキソウ属(Leontpodium)、トウヒレン属(Saussurea)、ヤマハハコ属(Anaphalis)などです。特に前の二つはワタゲに包まれたセーター植物として知られています。これらの植物は標高4000~5000mに咲き、トレッキングの疲れを癒やして高山病の苦しさも忘れさせてくれます。
ウスユキソウ属
Leontopodium pusillum
撮影 2017.7.24 5th Lake
標高 5000m
アラルディア属
Allardia glabra
撮影 2022. 9. 1 6th Lake
標高 5200m
ウスユキソウ属
Leontopodium jacotianum
撮影 2022. 8.31 6th Lake
標高 5200m
トウヒレン属
Saussurea simpsoniana
撮影 2022. 8.31 6th Lake
標高 5200m
ヒッポリティア属
Hippolytia gossypina
撮影 2022. 8.31 6th Lake
標高 5200m
ヤマハハコ属
Anaphalis xyilorhiza
撮影 2018. 7.17 6th Lake
標高 5200m
ベンケイソウ科
イワベンケイの仲間は標高5000m付近に咲いています。岩陰に咲くものが多いですが、砂地に咲いていることもありました。クレヌラタは大きな塊になることもあり、庭に咲いていたらさぞ見事だろうと思うほどです。
イワベンケイ属
Rhodiola fastigiata
撮影 2019.7.16 Cho Oyu BC.
標高 5200m
イワベンケイ属
Rhodiola himarlensis
撮影 2018.7.4 Gokyo
標高 4800m
ベンケイ属
Rhodiola sinuata
撮影 2022. 8.24 Kyangjuma
標高 3550m
サクラソウ科
ヒマラヤに咲く桜草は小柄で、花の色や形は変化に富んでいる。多くはピンク色だが、白、黄色、青紫などもあります。植物図鑑を見ると「多年草で北半球の温暖帯から寒帯にかけて分布する。それぞれの種の分布は集中的で、狭い地域の固有種が多く、広域分布種でも地域的に偏在する事が多い」(ヒマラヤ植物大図鑑)となっています。なるほど桜草の変化と多様性はここにあるのかと思いました。
サクラソウ属
Primula primlina 2018.7.3
撮影 2018. 7. 3 (Luza)
標高 4300m
サクラソウ属
Primula caveana
撮影 2019.7.16 (6th Lake)
標高 5100m
サクラソウ属
Primula macrophylla
撮影 2018.7.4 (1st Lake)
標高 4700m
サクラソウ属
Primula wollastonii
撮影 2018.7.3 (Luza)
標高 4360m
トチナイソウ属
Androsace nortonii
撮影 2018.7.9 (1st lake)
標高 4700m
トチナイソウ属
Androsace delavayi
撮影 2018.7.9 (1st lake)
標高 1700m
バラ科
バラ科の花は鮮やかなものを見かけます。キジムシロの仲間は黄色、バラ属はピンクが一般的です。ヒマラヤではトレッキングコースの道脇にたくさん咲いています。バラの間からヒマラヤの白い頂を見ることもあるでしょう。景観に彩りを添えているのがバラの仲間たちです。
キジムシロ属
Potentilla biflora
撮影 2018.7.4 (2nd lake)
標高 4740m
コトネアスター属
Cotoneaster microophyllus
撮影 2016.7.9 (Kyangjuma)
標高 3550m
キジムシロ属
Potentilla eriocarpa
撮影 2018.7.19 (1st lake)
標高 4600m
ユリ科
エベレスト街道の起点ルクラを出発し、しばらくすると大型の百合ネパレンセ(nepalense)を見かけます。崖の上や斜面など頭上に咲いていることが多いので注意して見ましょう。標高が上がるにつれマクロフィルム(macropyllum)が現れ、標高4000mを超えると小型のナヌム(nanum)を見ることができます。
ユリ属
Lilium nepalense
撮影 2019.7.7 (Thalsharoa)
標高 2673m
ノトリリオン属
Notholirion macrophylum
撮影 2017.7.17 (Phortse tenga)
標高 3680m
ユリ属
Lilium nanum
撮影 2018.7.4 (Gokyo 4,800m)
標高 4800m
ラン科
ヒマラヤの植物で一番以外に思ったのはラン科の植物です。それは日本のランによく似ていたからです。アツモリソウ属(Cypripedium)は日本のものによく似ています。ただ、咲いていた場所が4300mである点が違っていました。
アオルキス属
Aorchis spathulata
撮影 2018.7.3 (Dole)
標高 4200m
アツモリソウ属
Cypripedium himalaicum
撮影2019.7.13 (Lhabarma)
標高 4300m
ウチョウラン属
Ponerorchis chusua
撮影 2016.7.12 (Dole)
標高 4200m
リンドウ科
ヒマラヤでは8月を過ぎると様々なリンドウが咲いています。色は鮮やかな青で、ヤクが放牧されている草地で見かけることが多いです。標高は4000mを過ぎたあたりからで、5200mまで見ることができます。また、地域的な変種もあり特定できないこともあります。
サンプクリンドウ属
Comastoma pedunculatum
撮影 2022. 8.29 (5th Lake)
標高 5000m
リンドウ属の一種
Gentiana sp.
撮影 2022. 8.27(Luza)
標高 4400m
リンドウ属
Gentiana nubigena
撮影 2022. 8.30 (6th Lake)
標高 5200m
その他 etc.
ヒマラヤに咲く高山植物には、その他まだまだ沢山の種類があります。残念ながらここにすべてを紹介することができません。しかし、私の記憶に残る植物をもう少し紹介したいと思います。また、ここに紹介できなかった花たちは拙著「地水風空花」第二章天空の花園をご覧下さい。
ユキノシタ科ユキノシタ属
Saxifraga melanocentra
撮影 2019. 7.17 (6th Lake)
標高 5200m
ユキノシタ科ユキノシタ属
Saxifraga saginoides
撮影 2022. 8.29 (5th Lake)
標高 5000m
キキョウ科キアナントゥス属
Cyananthus incanus
撮影 2022. 8.25 (6th Lake)
標高 5200m
ケシ科 Meconopsis/キク科 Aster/ベンケイソウ科 Rhodiola/サクラソウ科 Primula/バラ科 Rosa/ユリ科 Lilium/ラン科 Orchida/リンドウ科 Gentiana/その他etc./